2019年11月9日(土)にロームシアター京都のメインホールにて「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」オーケストラ・コンサート2019【京都公演】が開催されました。
ステージには1台のタイプライター。開演のベルが鳴ると、ヴァイオレット・エヴァ-ガーデン役・石川由依さんが現れます。タイプライターの文字盤を優しく叩き、「お初にお目にかかります。お客様がお望みなら、どこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」と、ヴァイオレットの挨拶とともにコンサートの幕が上がりました。
奏でられたのは、「Theme of Violet Evergarden」。スクリーンにはヴァイオレットたちが日々を過ごすライデンシャフトリヒの街並みが映し出され、会場が『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の世界へ染め上げられます。
続いて、アニメの主題歌「Sincerely」。ステージに登場したTRUEさんの力強い歌声がホールに響き渡ります。石川さんとギルベルト・ブーゲンビリア役・浪川大輔さんが登壇すると、会場からは大きな拍手が送られました。
今回、オーケストラ・コンサートをお送りするのは、関西を代表するオーケストラ、関西フィルハーモニー管弦楽団、指揮は栗田博文さん。演奏が素晴らしすぎて口が開いたままになり、口が乾いてしまったという浪川さんに温かい笑いも溢れました。TRUEさんは「ありったけの愛を届けようと思ってここに来たので、愛があふれた一日になるといいなと思っています」と、石川さんは「今日は思う存分『ヴァイオレット』の世界に浸っていってください」と、コンサートへの意気込みを語りました。
──「少佐の瞳があります。少佐の瞳と同じ色です……これを見た時の……こういうのを……何と言うのでしょう……」
物語の始まりを告げるように、ヴァイオレットの幼い言葉とともに「A Doll’s Beginning」が奏でられます。スクリーンにはアニメ第1話の映像が映し出されました。花が芽吹く映像だけでも感動する、と熱く語った浪川さん。たくさんの想いが込められた映像が演奏と調和していきます。「One Last Message」、「The Voice in My Heart」、「Ink to Paper」など『ヴァイオレット』の世界を彩り、寄り添ってきた音楽が、繊細に、時にダイナミックに奏でられていきます。
ヴァイオレットがアイリスの手紙を手掛けるシーンで印象的な響きを残した「The Birth of a Legend」。そして、「Those Words You Spoke to Me」、「The Long night」など、印象が異なる楽曲が続いて演奏されました。
そして、ヴァイオレットを自動手記人形として花開かせた「Letter」が始まります。オペラ歌手イルマ・フェリーチェの映像とともに、TRUEさんがステージへ。まるでイルマと歌っているような、ドラマチックな空間が生まれました。TRUEさんの力強く訴えかけるような歌に客席からは惜しみない拍手が送られました。
石川さんと浪川さんによるトークコーナーでは、これまでの演奏を聴いての感想や、Evan Callさんとの音楽制作のエピソードなどが語られました。
「音楽を聴くとそのシーンが思い出されてすごく感動する」と石川さん。浪川さんは、形のない“音”を一つにまとめ上げ、曲を動かしている指揮者の力に感激していました。
Evanさんを交えてのトークでは、石川さんがEvanさんに作曲の裏話を尋ねる場面も。音楽プロデューサーの斎藤滋さんとの打ち合わせで方向性を決めて曲のデモを作り、その後に思いついたものを足していく方法を取ったという『ヴァイオレット』の音楽。原作文庫小説のCMから作品の世界観や動きのヒントをもらい、少しずつ音楽を作り上げていった、とEvanさん。「最初はFunkやR&Bのような音楽にしようかなとも考えたんですけどね。でも、世界観を考えて思いとどまり、結局、FunkやR&Bにしなくて良かった」と冗談も織り交ぜながらの和やかなトークコーナーとなりました。
再び楽団を迎え入れ、「Across the Violet Sky」がスタート。スクリーンには第7話、劇作家オスカー・ウェブスターと一人娘オリビアの物語が映し出されました。そして、ヴァイオレットとギルベルトの出会いから別れを、「Inconsolable」、「Fractured Heart」の演奏とともに振り返りました。オーケストラの演奏に導かれ、2人の過ごした日々、すれ違った想い、届かなかった言葉がよみがえります。
ヴァイオレットが宝物のように思い起こしたのはギルベルトの言葉。「ヴァイオレット…ヴァイオレットだ。成長すれば、君はきっとその名前にふさわしい女性になる…君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」と、浪川さんがギルベルトの台詞を披露すると、まるでそこにギルベルトがいるかのよう。ヴァイオレットを導くように、「Believe in…」が寄り添い、結城アイラさんがステージに登場。「だから忘れないで 明日へ向かうこと」と、 優しく語り掛けるように歌い上げました。
結城さん自ら作詞を手がけた「Believe in…」。「(曲が流れる)アニメ第9話は、ヴァイオレットが自分の過去と向き合って成長する話だったので、どんなに辛いことがあっても、前に進んでいくんだ、という思いを持って歌詞を書かせていただきました」と語り、Evanさんがオーケストラに合うように作曲していたこともあり、表情豊かな曲になるようにレコーディングをしたことにも触れ、「本日はフルオーケストラということで、そういったことも意識しながら歌わせていただきました」と結城さん。
アニメ第10話に登場する少女アン・マグノリアがヴァイオレットの前で泣き叫ぶシーンがスクリーンに映し出され、透き通るようなバイオリンの音色から「Letters From Heaven」の演奏が始まります。アンが成長していくシーンと、音が重なっていき、客席からはすすり泣く声も。
そして、コンサートも終盤となり、Evanさんが登場。「What Means To Love」、「Violet’s Letter」の2曲を自ら指揮。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を表現し続けてきた多くの楽曲の中でも、とくに代表的な2曲に大きな拍手が起こりました。
コンサートの締めくくり、茅原さんが歌うのはアニメのED主題歌「みちしるべ」。伸びやかな歌声、繊細なピアノの音色、そして温かなオーケストラの演奏に会場が感動に包まれました。
アンコールの拍手が鳴りやまない中、舞台袖から栗田さんがひょっこりと現れ、そのまま指揮台に向かうのかと思ったら、舞台袖に戻ってしまい……と、会場からは大きな笑いが起こります。今度こそ栗田さんが登壇するとさらに大きな拍手で会場が熱気に包まれました。
始まったのは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-」より、「Waltz」。そして、「エイミー」。純白のドレスに身を包み、踊るヴァイオレットとエイミー・バートレット。空に手を伸ばしたテイラー・バートレットと共に登壇した茅原さんは、目に涙を浮かべながら「エイミー」を優しく歌い上げました。
アンコール最後の曲は、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の始まりの曲「Violet Snow」。美しい旋律と結城さんの歌声が、会場を包み込んでいきます。天井から降り注ぐ無数のリボンと星は、まるでアニメ13話に登場する飛行手紙のよう。ヴァイオレットたちと一緒に飛行手紙を見ているかのような光景とオーケストラの演奏が一体となり、コンサートのラストを飾りました。茅原さんが「『みちしるべ』と『エイミー』をこれからも大切に歌わせていただきます」と話すと、温かい拍手が沸き起こりました。
エンディングを迎え、出演者全員が登壇した際、石川さんは満席の会場を見渡しながら「非常に多くのお客様が来てくださって、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品が成長して、みなさんに愛していただける作品になったんだなと思うとすごく嬉しい気持ちでいっぱいです」と、瞳を潤ませました。また、『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』に触れ、「映像に負けない素晴らしい演技ができるように私も頑張っていきたいと思います。ぜひ皆さん楽しみにしていてください」と話すと、力強い拍手が送られました。そして、一人ステージ上に残った石川さん。ヴァイオレットの“あの挨拶”でコンサートは幕を閉じました。
暗転したスクリーンに映し出されたのは『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の特報映像。映像の最後に表記された「2020 4.24 [fri] ROADSHOW」の文字に、驚きと喜びの歓声が沸き起こり、会場を揺らしました。鳴り止むことのない拍手の中、ヴァイオレット・エヴァーガーデンは再び歩み始めます。
「お客様がお望みならどこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会